2018年4月19日 (木)

武田清子さんが亡くなりました

 鶴見俊輔、丸山真男氏等と「思想の科学」の創刊に携わり、天皇制について独自の視点で考察した思想史学者の武田清子さんが100歳で亡くなりました。老衰ということで、天寿を全うされました。

 武田さんとは4年前にお会いしています。さんこう社から出版した大口邦雄著「リベラル・アーツとは何か」の帯に推薦文を書いて頂くためでした。そのときの武田さんは車椅子でしたが、96歳とは思えないほど、記憶もしっかりとしていて、いろいろな話を聞かせていただきました。「リベラル・アーツとは何か」の推薦文も、これはリベラル・アーツの歴史を体系的にきちんと書かれた本だからと、喜んで書いてくださいました。
 おかげさまで、この本はさんこう社を代表する出版物としてロングセラーを続けています。これも武田さんの帯のキャッチコピーが一助となっていると思っています。
 謹んでご冥福をお祈りいたします。
 
 

2018年4月17日 (火)

銀座はやっぱり日本の一等地

 久しぶりに「銀座の恋の物語」をビデオで観た。石原裕次郎と浅丘ルリ子が主演の映画だ。

日本映画が活況を呈していた頃の作品で、私の好きな蔵原惟繕監督によるテンポのいい恋愛ドラマである。脚本が山田信夫と熊井啓といえば、日本映画ファンには納得できる作品だろう。
 この映画の重要な舞台がデパートで昭和30年代のデパートも輝いていた。銀座松屋で撮影されたもので、当時下から上まで中央部分が吹き抜けになっていた。消防法によりあの形は廃止されたときいたが、一階から上を見上げた景観はなかなかのものだった。ちょうど私はその頃、銀座で働いていたので、この映画の撮影を遠目から見ることができた。今は昔の物語である。
 銀座のデパートも松坂屋が消え、あちらこちらで大きく様変わりしているが、老舗の店はまだまだ多くが健在だ。木村屋のアンパン、天賞堂の時計と鉄道模型、書店の教文館、松崎煎餅、銀座ライオン、呉服のいせよし等。これらの経営者達が、自分の店と銀座について語った講座が2006年から2009年にかけて開かれた。松屋の筋向いにある教文館ビルに入っていた恵泉女学園の、恵泉銀座センターが行ったものである。この講座を「新銀座学」として私の出版社が一冊の本に纏めたのは楽しい思い出として残っている。
 老舗の社長さん達に校正を届けては、いろいろな話を聞くことが出来た。さすが銀座は日本の一等地、みなさんそれぞれ苦労はすれど、自信を持って暖簾を守っていらした。どうぞこれからも、銀座で繁栄を続けますよう願っている。

2018年4月15日 (日)

呂娟さんの個展に行きました

 昨日、KIYOSHI ART SPACEで開催されている中国人の画家、呂娟さんの絵を観てきました。KIYOSHI ART SPACEは「黒白寺社」(さんこう社から出版した写真集)の関藤清さんが六本木でやっている画廊で、中国人を始め世界の気鋭な芸術家の作品を展示しています。

 今回の呂娟さんは1990年に日本に留学し、水墨画、彩墨画、岩彩画等を学び、30年近く日本で活躍しています。「花曇」と題された個展は全ての作品が桜を描いています。桜は中国では、あまり画材となることはないそうです。日本で長年勉強してきたことから、呂娟さんの桜に対するイメージが開花されたのでしょう。
 独特な幹の形と散りばめられた桜に、バックの白が印象的でした。水墨画に込められた呂娟さんの思いが強く感じられる世界で、ぜひ多くの人に観て欲しいと思います。
 KIYOSHI ART SPACEは11:00~19:00まで開館。月曜日と祝日が休み。TEL03-6432-9535
info@kiyoshi-art.com です。

2018年4月12日 (木)

「火垂るの墓」再放映決定に思う

 アニメ映画の監督だった高畑勲さんが5日に亡くなった。代表作の「火垂るの墓」が明日、日本テレビで当初の予定を変更して放映されるという。このアニメはテレビで何度も流されてきたので、多くの人が知っている物語だろう。野坂昭如の原作で、1945年6月5日の神戸大空襲の体験を基に描かれている。戦争の悲惨さを訴えた作品として、歴史に残るアニメである。

 敗戦の年は3月10日の東京大空襲をはじめ、日本全国で空襲の被害を受けている。極め付きが広島、長崎の原爆投下であった。
 原爆を扱った記録や物語は数多くあるが、広島に比べて長崎の方が少ないように思えるのは私だけだろうか。広島に投下された「リトルボーイ」より長崎に投下された「ファットマン」の方が1.5倍の威力があったのだが、長崎が山に囲まれていたので被害が広島ほどではなかったからか。それでも長崎原爆による死傷者は14万9千人に及んでいる。
 そんな長崎原爆のことを描いた森成人さんの「漆黒の月 長崎原爆投下からの九日間」を今月の1日にさんこう社が刊行したことは、先日のブログで書いた。発売後12日を経過したが反響の多さに驚いている。アマゾンのカスタマレビューに何人かが書き込んでいたり、長崎でも著者の家族の周辺から話題が広がっているという。長崎の被爆の模様が詳細に語られているのは貴重なことだろう。
 北朝鮮の核実験から、シリアの化学兵器に対するトランプ大統領の過激な発言と、世界は火種が尽きない。「火垂るの墓」を見て、「漆黒の月」を読んで、戦争の悲惨さを考えてみませんか。

2018年4月 8日 (日)

1965年にオーストラリアへ留学し、そのまま居ついた女性がいます

 アマゾンの本棚を覗いていたら、さんこう社が2009年に刊行した伊佐ピンカートン曄子さんの「ふたつの文化に生きるー日本とオーストラリア」について書かれたカスタマレビューをみつけました。この本は、伊佐さんの弟が私の知り合いだったので作ったものです。

 ルフトハンザ航空のスチュワーデスに合格したのに就職せず、英語力を磨くためオーストラリアへ留学したのが27歳のとき。そのままオーストラリアに居ついて日本語教師、旅行業、翻訳業とキャリアを積み重ねた伊佐さん。今でもオーストラリアで生活されています。
 この本には一人の女性のグローバル精神が溢れています。リベラルな家庭で育った日本での生活。オーストラリアでのキャリアウーマンの姿。今では珍しくないことですが、1965年に飛び立ったのです。当時は新鮮なことだったでしょう。それぞれの国での生活が生き生きと描かれた素晴らしい本です。
 本が出来たときに、お孫さんを連れて帰国されたのですが、気さくで感じのいいおばさんといった雰囲気でした。今年か来年、また帰国されるそうです。お会いできればいいなと思っています。
 そういえば、本ができた翌年、伊佐さんの知人がオーストラリアから訪ねてきて、オーストラリア在住の日本人達の移住談を纏めて本にしたいと言ってました。面白い企画と思ったのですが、数千冊を日本で作る費用よりも、オーストラリアへ送る送料が莫大なものになりそうなのであきらめた記憶があります。
 本作りをしていて一番の楽しみは、その人なりに独自の世界をもった著者との出会いです。企画も人あってのもの。新しい出会いを求めて、今日もふらふら、明日もふらふらの毎日です。

2018年4月 6日 (金)

希有のエッセスト、藤本邦彦さん

 藤本邦彦という友人がいます。私が昨年1月まで住んでいた東村山市の住民で、アルテ造園の社長です。社長になるまでの職歴は、書店員、絵本出版社、美術書出版社、造園会社員をしていました。無類の落語好きで、故柳家喜多八師匠とは親交があり、長く応援していました。

 藤本さんの職歴をみて分かるように出版について詳しく、私はいろいろと助言を受けてきました。高部晴市さんの絵本「たこちゃん」など、彼の紹介で出版しました。「たこちゃん」は発売後すぐ、全国の図書館から注文がきて800冊出荷しました。図書館でこんなに売れた本は他にはありません。
 その藤本さんですが文章もうまく、私共のさんこう社から2冊のエッセイ集を出版しています。「ミミズの心臓、ノミのため息」の1,2集で、この本はさんこう社が発行していた文芸誌「銀河」に連載していたものをまとめたものです。残念ながら「銀河」は休刊しましたが、刊行を続けていれば今も連載は続き、ミミズも3集を刊行したと思います。
 このエッセイ集は藤本さんのエスプリが詰まっていて、政治の辛口批評から、落語の話、虫や花のことまで楽しく語っています。このブログを書いていると酒好きの藤本さんが、居酒屋でチビチビ酒を飲みながら、ミミズの心臓からノミのため息を吐き出しながら、小さい声であれこれ世の中のことを語っていたのを懐かしく思い出しました。
 庭師としてほとんど休むことのない藤本さん。どうぞ身体を大切に、これからも人生と社会への義憤を、落語風ユーモアでシャレのめして下さい。

2018年4月 3日 (火)

武蔵野市に住んで良かった

 武蔵野市とは縁が深い。高校が武蔵高校で、その後の職場も武蔵野市内だったので55年以上の付き合いです。昨年1月から住まいも武蔵野です。

 その武蔵野で毎月第1日曜日の昼に西部コミセンで開催されている「きらくら」食事会にはまっています。武蔵野市民社会福祉協議会の<身近な地域の居場所づくり助成事業>の助成を受けて行っているもので、参加の予約をすれば誰でも食事ができます。食事の前後には参加者同士で会話を楽しめます。
 主催者の一人で栄養士のTさんとは、別の会のウオーキングでも一緒なので、いろいろ食事のアドバイスをしてくれます。一人暮らしになって20年ですが、食事づくりは最低限のことしかしません。食べれれば何でも、どうでもいいほうなので偏食に陥りがちです。成人病もたいして進んでいないので無頓着でいます。そんな私にTさんはあれこれ手料理のコツを指南してくれます。言われるように台所に向かうべきとは思うのですが、ついついテレビや読書に向かって、おかずは出来合いで済ませています。無精者の性格はなかなか直りません。でも先日、食器棚の奥にフライパンがあるのを見つけました。何年も使ってなかったということです。これを機会にTさんが教えてくれた料理に挑戦してみようと考えはじめています。
それにしても武蔵野市はいいところです。

2018年4月 1日 (日)

新刊本「漆黒の月」ー長崎原爆投下からの九日間ー本日発売です。

 今朝の朝日新聞の1面トップ記事は、

  「核なき世界」日本異論 「核兵器なき世界」を掲げるオバマ政権が2009年に発足した当 初から、日本政府が米国の核兵器は必要だと米側に強く訴えていたことがわかった。
  唯一の被爆国である日本が、核軍縮よりも米国の「核の傘」への依存を優先し続けている日本政府の姿勢について述べています。これでは核廃絶は遠い先のことより、永遠に出来ない状況です。
 そんな時、さんこう社は森 成人さんの書いた小説「漆黒の月」を今日発売しました。今年最初の出版です。森さんは長崎の被爆二世。父と叔母の証言を基に描いたもので、原爆投下からの九日間の家族の行動を克明に描いています。この本を知人に読んでもらったら、「圧倒された。原爆直後の長崎の状況が詳しく語られている」と言ってくれました。
 世界の人々に核の恐ろしさを胸に刻んで欲しいのに、核の脅威は進む一方です。核の恐ろしさを再認識して、核廃絶を訴える。「漆黒の月」はきっと読む人にそんな気持ちを起こさせる本です。どうぞ読んでみてください。

2018年3月31日 (土)

カリグラフィーが美しい松田圭子さんの2冊の本

 ゴシック体やイタリック体などの書体を使って美しい文字を書くカリグラフィー。西洋書道とも言われていますが、美しい文字に美しい画をセットして作られたのが、松田圭子さんの「ことばの贈りもの」と「ことばの恵み」の本です。2冊とも、さんこう社から出版しました。

 松田さんはカリグラフィーデザイナーとして、ローマ法王庁大使館へ意匠制作をしたり、数多くの個展を開くとともに、カリグラフィー教室で教えておられます。
「ことばの贈りもの」は、マザーテレサの活動施設の壁に書かれたことば。ニューヨークの大学病院の受付の壁に書かれた無名兵士の詩。そして聖書の中から選んだ心打つことばと、カソリックの信者である松田さんらしい作品です。
「ことばの恵み」はクリスマスからイースターまで、恵み溢れる聖句の中から選ばれています。まさに、ことばの恵みであり、泉です。
「ことばの贈りもの」は2010年、「ことばの恵み」は2012年に刊行しましたが、どちらもロングセラーとなっています。
 もうすぐイースターです。プレゼントにいかがですか。

2018年3月29日 (木)

モノクロ?の美しさに溢れた写真集「黒白寺社」

 私の出版社から昨年刊行した写真集「黒白寺社」は、スミ1色なのに雲の色など陰影がよく出ていると、書店員から褒められた本です。実は、この写真集はカラー印刷で刷られています。少し専門的になりますが高精細印刷というアミ点に工夫した方式に4色で刷ったもので、黒い色も漆黒からグレーまで異なる色となっています。

 撮影者の関 藤清さんは中国人で、日本全国の寺院、神社98ヶ所を訪れて撮影されました。2005年から12年間にわたって撮影したもので、それぞれの建物に魂を感じたと言っています。感じた魂をどう表現されているか、この写真集を手にとって皆さんに確かめていただければ幸いです。
 関さんは中国で最初の漫画グループを創設したり、作曲家としても知られる異色の芸術家です。昨年、六本木に清アートという画廊を開設しました。ここでは中国人の個展を中心に斬新な作品を展示しています。こちらにも、ぜひ訪れてみて下さい。清アートのTELは03-6432-9535 www.kiyoshiart,comです。

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